『ヒューマンエラー』─「人はなぜ間違えるのか」を人間と仕組みから考える

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はじめに

初めまして、YU玄(ユウゲン)です。(私のプロフィールはこちら)

仕事をしていると、誰でもミスをします。

メールの送信先を間違える。

確認すべきことを忘れる。

いつもならできる作業で、なぜか間違えてしまう。

そんなとき、私たちはつい、

「注意が足りなかった」

「もっと気をつければよかった」

と考えてしまいます。

しかし、本当にそれだけが原因なのでしょうか。

今回ご紹介するのは、小松原明哲氏の『ヒューマンエラー』です。

本書のメッセージを一言で表すなら、

「人は間違える」という前提に立ち、人間と仕組みの両面からエラーを考える。

ということだと思います。

本書では、事故が起こる原因を「人の不注意」だけに求めるのではなく、自然、社会、技術、対象、人的要因など、さまざまな側面から考えていきます。

さらに、ヒューマンエラーにはどのような種類があるのか、なぜエラーが起こるのか、そしてどのように防止すればよいのかについて、人間の特性や作業環境、マニュアル、チームなどの観点から解説されています。

特に印象に残ったのは、「人がミスをした」という結果だけを見るのではなく、「なぜ、その状況で、その行動をしたのか」まで考えることが重要だという点です。

「なぜ人は間違えるのか?」

そして、

「どうすれば、人間のミスを減らすことができるのか?」

そんなことを考えさせてくれる一冊です。

※本ページはプロモーションが含まれています。

 

本書の内容

本書の主題は、「人はなぜ間違えるのか?」という問いです。

事故が起きると、私たちはその原因を「人のミス」に求めがちです。

しかし、本書では事故の起因源を、

  • 自然要因
  • 社会要因
  • 技術要因
  • 対象要因
  • 人的要因

の5つに分類しています。

つまり、事故が起きたからといって、すぐに「人が悪かった」と考えるのではなく、さまざまな要因が複雑に関係していると考えるのです。

そもそもヒューマンエラーとは何なのでしょうか。

本書では、ヒューマンエラーを「期待されることが果たせなかったこと」と捉えています。

この定義からも、ヒューマンエラーは単なる「不注意」よりも広い概念であることが分かります。

忘れてしまう。

間違った操作をしてしまう。

必要な知識が不足している。

必要な技量が不足している。

ルールから外れた行動をする。

こうしたさまざまな行動が、ヒューマンエラーにつながります。

ヒューマンエラーにはさまざまな種類がある

本書で興味深いのは、ヒューマンエラーを一括りにせず、さまざまな角度から分類していることです。

結果から見ると、

  • オミッションエラー:必要な行為をしない
  • コミッションエラー:必要でない行為をする
  • イクストレニアスアクト:余計な行為をする
  • シーケンシャルエラー:行為の順序を間違える
  • タイムエラー:行為をするタイミングを間違える

といった分類があります。

さらに、人間の特性から見ると、

  • できない相談
  • 錯誤
  • 失念
  • 技量不足
  • 知識不足
  • 違反

などに分類することができます。

同じ「ミス」に見えても、その原因はそれぞれ違います。

たとえば、「忘れていた」のと「知らなかった」のでは、必要な対策は違います。

「操作を間違えた」のと「そもそも人間には実行できない作業だった」のでも、考えるべきことは変わります。

そのため、「ミスが起きた」という結果だけではなく、「どのようなエラーだったのか」を分析することが重要になります。

ヒューマンエラーを「人間だけ」の問題にしない

本書を読んで特に印象に残ったのが、「ヒューマンファクター」という考え方です。

ヒューマンファクターとは、人間科学を体系的に適用し、人間とその活動の関係を最適なものにしていく考え方です。

ここで重要なのは、ヒューマンエラーを「人間の問題」だけとして扱わないことです。

人間は、仕事をするときに一人で存在しているわけではありません。

道具を使い、マニュアルを読み、作業環境の中で働き、周囲の人とコミュニケーションを取っています。

そこで登場するのがSHELモデルです。

SHELモデルでは、作業者本人を中心に置き、その周囲にある、

  • Software(ソフトウェア)
  • Hardware(ハードウェア)
  • Environment(環境)
  • Liveware(周りの人たち)

との関係からヒューマンエラーを考えます。

つまり、

「人がミスをした」

だけで終わらせるのではなく、

「マニュアルは分かりやすかったのか?」

「道具や設備に問題はなかったのか?」

「作業環境に問題はなかったのか?」

「周囲とのコミュニケーションに問題はなかったのか?」

と考えていくのです。

人を変えるだけではなく、人を取り巻く環境や仕組みも変える。

これが、ヒューマンエラーを考えるうえで重要な視点になります。

「人は間違える」という前提に立つ

人間には、さまざまな特性があります。

疲れれば注意力が低下します。

時間に追われれば、確認を省略してしまうかもしれません。

複雑な作業では、記憶していた手順を間違えることもあります。

本書では、こうしたヒューマンエラーの背後にある要因を、行動形成因子として捉えています。

  • 体調
  • 意欲
  • 注意
  • 環境
  • 時間

こうした要因が、人間の行動に影響を与えます。

そのため、

「もっと注意すればいい」

という精神論だけでは、十分な対策になりません。

人間には間違える可能性がある。

その前提に立って、「人間が間違えても、大きな事故につながらない仕組み」を考えることが重要なのです。

リスクは「ひどさ」と「発生確率」で考える

本書では、リスクについて、

リスク = ハザードのもつひどさ × ハザードの発生確率

という考え方が示されています。

危険を考えるとき、私たちは「危ないか、危なくないか」のように考えてしまいがちです。

しかし、リスクを考えるには、

「もし起きたら、どれくらい重大なのか?」

「そもそも、どれくらい起こりやすいのか?」

という2つの側面を見る必要があります。

これは仕事における安全管理だけでなく、日常生活でさまざまなリスクを考えるときにも使える考え方だと思います。

人間の行動を「知識・規則・スキル」で考える

本書で紹介されているSRKモデルも興味深い考え方です。

人間の行動を、

  • 知識ベース
  • 規則ベース
  • スキルベース

の3つに分けて考えます。

初めて経験する問題では、知識を使って考えながら行動します。

経験を積むと、「この場合はこの手順」という規則に基づいて行動するようになります。

さらに熟練すると、意識的に考えなくても自然にできるスキルとして身についていきます。

これは、勉強や仕事にも当てはまります。

最初は「知っている」だけだった知識が、繰り返し使うことで「使える知識」になり、最終的には意識せずに実行できるようになる。

知識を身につけるだけではなく、実際に使い、繰り返し経験することの重要性を考えさせられるモデルです。

マニュアルにも「役割」がある

もう一つ印象に残ったのが、マニュアルについての考え方です。

マニュアルと一言で言っても、その役割は同じではありません。

本書では、

  • 墨守型
  • 遵守型
  • 標準型

という区別がされています。

すべてを細かく決め、その通りに実行することが求められる仕事もあれば、基本的なルールを示しながら、状況に応じた判断を求める仕事もあります。

つまり、「マニュアルを作れば安全になる」というわけではありません。

仕事の性質や人間の特性に合ったマニュアルでなければ、現場で使われなかったり、かえって負担を増やしたりする可能性があります。

マニュアルは「作ること」ではなく、「どのような役割を持たせるのか」まで考えることが重要なのだと思います。

おすすめする理由

①「ミスをした人」ではなく「ミスが起きた状況」を考えられる

この本を読んで一番印象に残ったのは、ヒューマンエラーを個人の責任だけで終わらせないという視点です。

仕事でミスが起きたとき、私たちはつい、

「誰が間違えたのか」

を探します。

もちろん、本人の知識や技量、注意などが原因になっている場合もあります。

しかし、それだけでは同じミスを繰り返してしまうかもしれません。

重要なのは、

「なぜ、その人はその状況で、その行動を取ったのか?」

と考えることです。

作業環境に問題はなかったのか。

マニュアルは分かりやすかったのか。

必要な情報は与えられていたのか。

時間に余裕はあったのか。

周囲とのコミュニケーションに問題はなかったのか。

こうしたところまで掘り下げることで、初めて再発防止につながる改善点が見えてきます。

これは仕事だけでなく、日常生活にも応用できる考え方だと思います。

 

②「注意する」から「仕組みを変える」へ発想を変えられる

人がミスをしたとき、

「次から気をつけよう」

という結論になりがちです。

もちろん注意することも大切です。

しかし、人間には記憶や注意力、判断力などの限界があります。

どれだけ気をつけても、ミスを完全になくすことはできません。

そこで重要になるのが、

「人間がミスをしないようにする」

だけではなく、

「人間がミスをしても、大きな問題にならない仕組みにする」

という発想です。

チェックリストを使う。

確認作業を仕組み化する。

間違った操作をしにくい設計にする。

必要な情報を分かりやすく表示する。

こうした工夫によって、人間の弱点を仕組みで補うことができます。

業務改善や仕事の効率化を考えるうえでも、非常に重要な視点だと思います。

 

③「失敗しない人」ではなく「失敗しても立て直せる仕組み」を考えられる

私たちは、失敗しないことを目指しがちです。

しかし、人間である以上、すべてのミスをなくすことはできません。

そこで、

「ミスをゼロにするにはどうすればいいか?」

だけではなく、

「ミスが起きたとしても、事故や大きな損失につながらないようにするにはどうすればいいか?」

と考えることが重要になります。

これは、仕事だけでなく、人生におけるさまざまな失敗にも通じる考え方ではないでしょうか。

失敗そのものを完全になくすことは難しい。

失敗したときに大きなダメージを受けないように準備する。

そして、失敗から学び、次の行動を変えていく。

「失敗しないこと」だけを目指すよりも、「失敗しても立て直せること」を考える。

本書は、そんな視点を与えてくれます。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は『ヒューマンエラー』から、私が特に印象に残ったポイントを紹介しました。

人は誰でも間違えます。

そのため、ミスをした人だけに原因を求めるのではなく、なぜそのミスが起きたのかを、環境や道具、手順、組織なども含めて考えることが大切です。

「もっと注意する」だけではなく、「どうすればミスが起きにくくなるか」を考える。

本書は、ヒューマンエラーを個人の問題として捉えるのではなく、仕組みの問題として考える視点を教えてくれる一冊です。