「人を助けるとはどういうことか」─支援の本質を見直す一冊

恋愛観

はじめに

初めまして、Wiseです。(私のプロフィールはこちら

現代社会は物質的には豊かになった一方で、世の中の空気がどこか重くなったと感じることが増えました。職場や家庭、友人との関係の中で「助けたい」と思って手を差し伸べたはずなのに、うまく伝わらなかったり、助けたつもりが空回りしたという経験は少なからずあるのではないでしょうか。

今回、『人を助けるとはどういうことか』(エドガー・H・シャイン著、英治出版)を読んでみました。「プロセス・コンサルテーション」という考え方を軸に「人を助ける」行為の本質に深く踏み込んだ内容となっており、とても参考になったのでその内容についてご紹介したいと思います。「誰かの役に立ちたいけれど、どう接していいか分からない」「信頼関係を築く支援がしたい」といった方におすすめの記事です。

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本書の内容

本書の核心は、「人を助ける」という行為がもつ繊細で複雑な関係性の力学にあります。助ける側と助けられる側の間には、たとえ無意識であっても上下の非対称な関係が生じ、それが支援の成否を左右します。著者は、その関係をいかに対等で健全なものにできるかを探り、「プロセス・コンサルテーション」という考え方を提示します。

支援の前提となる信頼関係

著者は「信頼関係」が支援の前提にあるべきだとし、信頼関係とは次の2つが成立することと定義しています。

  1. その人間との関係の中で、自分がどんな価値を主張しても、理解され、受け入れてもらえること
  2. 相手が自分を利用したり、打ち明けた情報を自分の不利になるように用いたりしないと思うこと

 

支援者の3つの基本的役割

著者は支援者がとりうる役割を次の3つに分類しています。

  1. 専門家:情報や知識、技術を提供する
  2. 医師:相手を診断し、解決策を提示する
  3. プロセス・コンサルタント:支援のあり方そのものを共に探る、対等な関係を重視する支援者

本書では特に「プロセス・コンサルタント」の立場が重視され、支援者は単にアドバイスするのではなく、「どのように支援すべきか」自体を相手と共に考えていくことが求められます。

プロセス・コンサルテーションの核心を成す考え

効果的な支援を成立させるには、プロセス・コンサルタントの役割を果たす支援者によって、まず始めに次のことが実行されねばならないとしています。

  1. 状況に内在する無知を取り除くこと
  2. 初期段階における立場上の格差を縮めること
  3. 認識された問題にとって、さらにどんな役割をとるのが最適かを見極めること

これらを通して、支援関係がより対等で信頼に基づくものになっていきます。

支援関係における7つの原則

本書で紹介される「支援関係における7つの原則」は、私たちが支援する立場に立つときの実践的な指針になります。

  1. 与える側も受け入れる側も用意ができているとき、効果的な支援が生じる
  2. 支援関係が公平なものだと見なされたとき、効果的な支援が生まれる
  3. 支援者が適切な支援の役割を果たしているとき、支援は効果的に行われる
  4. あなたの言動のすべてが、人間関係の将来を決定づける介入である
  5. 効果的な支援は純粋な問いかけとともに始まる
  6. 問題を抱えている当事者はクライアントである
  7. すべての答えを得ることはできない

どれもシンプルですが、実際の支援現場では見落としがちなポイントもあります。支援をうまく機能させるには、「支援される側の尊厳をどう守るか」という視点が必要であることが伝わってきます。

 

    おすすめする理由

    ①「支援」にひそむ無意識の上下関係に気づける

    私たちは「助ける」という行為を、善意の行動として一方的に捉えてしまいがちです。しかしながら、本書では助けることが無意識のうちに相手との力関係を生み出してしまう危うさを教えてくれます。その気づきがあるだけでも、人との関わり方がずいぶん変わるはずです。

    ②「問いかけること」の大切さが実感できる

    著者が提唱する「プロセス・コンサルテーション」では、まず相手に“純粋に問いかけること”から支援が始まるとしています。相手の状況を決めつけず、まず話を聞く。その姿勢の大切さをあらためて学ぶことができ、自分自身のコミュニケーションの癖にも気づかされました。

    ③ビジネス・教育・家庭などのあらゆる関係に応用できる

    この本の面白いところは、組織論に基づいて書かれていながらも、日常のあらゆる人間関係に応用できる点です。職場でのマネジメントはもちろん、子育てや友人関係においても、「どう関われば相手の力を引き出せるか」を考えるヒントが散りばめられています。

     

    まとめ

    いかがでしたでしょうか。内容についてはざっくりとした概要しかお伝えできませんが、「助けたい」という気持ちが本当に相手のためになっているか、自らに問い直す機会を与えてくれる良書です。ぜひ読んでみてください!