【完全独学】ITストラテジスト・合格体験記
目次
はじめに
初めまして、Wiseです。(私のプロフィールはこちら)
私は2024年4月開催のITストラテジスト試験(IPA)を受験し、実務経験なし・完全独学で合格しました。
この記事では、実務経験なし・完全独学での合格体験記を紹介していきます。
ITストラテジストが気になっている人、受験しようか悩んでいる人、どう勉強していけばよいか困っている人のヒントになれば幸いです。
※本ページはプロモーションが含まれています。
ITストラテジストの概要
ITストラテジスト試験は、情報処理の促進に関する法律に基づく国家試験です。
情報処理技術者試験の一区分であり、対象者像は「高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術(IT)を活用して事業を改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者」です。
経営戦略に基づいてIT戦略を策定し、ITを高度に活用した事業革新、業務改革、及び競争優位を獲得する製品・サービスの創出を企画・推進して、ビジネスを成功に導くCIOやCTO、ITコンサルタントを目指す方に最適な試験です。
試験概要
ITストラテジスト試験は毎年春期(4月)に実施されます。
「午前Ⅰ試験」「午前Ⅱ試験」「午後Ⅰ試験」「午後Ⅱ試験」の4つの試験区分を受験し、その全てに合格することが必要です。
なお、一つの試験区分の得点が基準点に達しないと、それ以降の試験区分は採点されずに不合格となります。(多段階選抜方式)
午前Ⅰ試験
・試験時間:50分
・出題形式:多肢選択式(4択)
・出題内容:知識を問う問題(高度区分試験共通問題)
・出題数:30問
・解答数:30問
・合格基準:60点以上(100点満点)
午前Ⅱ試験
・試験時間:40分
・出題形式:多肢選択式(4択)
・出題内容:知識を問う問題(ITストラテジスト固有の問題)
・出題数:25問
・解答数:25問
・合格基準:60点以上(100点満点)
午後Ⅰ試験
・試験時間:90分
・出題形式:記述式
・出題内容:技能を問う問題(ITストラテジスト固有の問題)
・出題数:3問
・解答数:2問
・合格基準:60点以上(100点満点)
午後Ⅱ試験
・試験時間:120分
・出題形式:論述式
・出題内容:技能を問う問題(ITストラテジスト固有の問題)
・出題数:2問
・解答数:1問
・合格基準:ランクA(A,B,C,Dで評価)
免除制度
次のいずれかを満たすことによって、その後2年間は午前Ⅰ試験を免除することができます。
- 応用情報技術者試験に合格する
- いずれかの高度試験または支援士試験に合格する
- いずれかの高度試験または支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の成績を得る
試験範囲
午前Ⅰ試験
- テクノロジ系
基礎理論/アルゴリズムとプログラミング/コンピュータ構成要素/システム構成要素/ソフトウェア/ハードウェア/ユーザーインターフェース/情報メディア/データベース/ネットワーク/セキュリティ/システム開発技術/ソフトウェア開発管理技術 - マネジメント系
プロジェクトマネジメント/サービスマネジメント/システム監査 - ストラテジ系
システム戦略/システム企画/経営戦略マネジメント/技術戦略マネジメント/ビジネスインダストリ/企業活動/法務
午前Ⅰ試験は高度区分試験での共通問題です。
試験範囲は「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」の3つの領域から、応用情報技術者試験レベルの問題が出題されます。
午前Ⅱ試験
- テクノロジ系
セキュリティ - マネジメント系
なし - ストラテジ系
システム戦略/システム企画/経営戦略マネジメント/技術戦略マネジメント/ビジネスインダストリ/企業活動/法務
午前Ⅱ試験からITストラテジスト用の試験問題となります。
特徴は、ストラテジ系に特化した出題である点です。セキュリティ以外はストラテジ系からの出題となります。
午後Ⅰ・午後Ⅱ試験
- 業種ごとの事業特性を反映し情報技術(IT)を活用した事業戦略の策定に関すること
経営戦略に基づく IT を活用した事業戦略の策定/IT によるビジネスモデルの開発提案/業務改革の企画/新製品・サービスの付加価値向上の提案/システムソリューションの選択/アウトソーシング戦略の策定 など - 業種ごとの事業特性を反映した情報システム戦略と全体システム化計画の策定に関すること
業務モデルの定義/情報システム全体体系の定義/情報システムの開発課題の分析と優先順位付け/情報システム基盤構成方針や標準の策定/システムソリューション適用方針の策定(ERP パッケージの適用ほか)/中長期情報システム化計画の策定/情報システム部門運営方針の策定/IT全般統制整備方針の策定/事業継続計画(BCP)の策定・実施/システムリスクの分析/災害時対応計画の策定/情報システム化年度計画の策定 など - 業種ごとの事業特性を反映した個別システム化構想・計画の策定に関すること
システム化構想の策定/業務のシステム課題の定義/業務システムの分析/業務モデルの作成/業務プロセスの設計/システム化機能の整理とシステム方式の策定/システム選定方針の策定(システムソリューションの適用ほか)/全体開発スケジュールの作成/プロジェクト推進体制の策定/システム調達の提案依頼書(RFP)の準備/提案評価と供給者の選択/費用とシステム投資効果の予測 など - 事業ごとの前提や制約を考慮した情報システム戦略の実行管理と評価に関すること
製品・サービス・業務・組織・情報システムの改革プログラム全体の進捗管理/情報システム基盤標準やシステムに関する品質管理標準の標準化推進/改革実行のリスク管理と対処/システムソリューションの適用推進/システム活用の促進/改革プログラムの効果・費用・リスクの分析・評価・改善/事業戦略・情報システム戦略・全体システム化計画・個別システム化計画の達成度評価 など
午後Ⅰ・午後Ⅱ試験はITストラテジストとしての技能が問われます。
ITを活用した事業戦略の策定や、システム化計画の策定などに関する問題が出題されます。
事前知識
2022年春期に基本情報技術者試験に合格、2022年秋期に応用情報技術者試験に合格しています。
2023年春期に一度ITストラテジストを受験しましたが不合格となり、1年越しでリベンジして今回合格することができました。
また、中小企業診断士試験と重複する部分が多く、かなりのアドバンテージになりました。
なお、受験時点でITストラテジストとしての実務経験はありません。
勉強期間
2022年12月に応用情報技術者試験の合格発表があり、2023年1月から勉強を始めました。
前述のとおり午前Ⅰ試験については2年間の免除制度が適用されるため、1回目、2回目どちらも午前Ⅰ試験は受験していません。
1回目の受験(2023年4月)での勉強期間はおよそ3か月間です。
1回目の受験では不合格でした。
次の受験機会が1年後となるため、一旦ITストラテジストの勉強から離れ、しばらくは別試験(ディープラーニングG検定、データサイエンティスト検定)の勉強に専念していました。
2回目の受験に向けて勉強を再開したのは2024年1月ごろでしたので、2回目の受験(2024年4月)での勉強期間もおよそ3か月間です。
したがって、通算の勉強期間は約6か月です。
使用教材・サイト
教材
①ALL IN ONE オールインワン パーフェクトマスター ITストラテジスト
TACが出版しているテキストです。午前Ⅱ試験・午後Ⅰ試験・午後Ⅱ試験に対応しています。
午前Ⅱ試験、午後Ⅰ試験の対策についてはこちらのテキストで十分対応可能だと思います。
午後Ⅱ試験については本書のみでは対策が足りないと感じたため、次の②のテキストを購入しました。
iTECが出版している午後Ⅱ試験に特化したテキストです。
論文の書き方・考え方が分かりやすく載っており、事例も豊富に記載されています。
ITストラテジストの実務経験がなかったため、①のテキストのみでは実際に自分で論文を書くことは難しいと感じ、本書を購入しました。文章に多少の癖を感じましたが、午後Ⅱ試験対策にかなり役立ちました。
また、立ち読みレベルですが以下のテキストもよさそうでした。
・ITストラテジスト 午後2 最速の論文対策 第5版 [スキマ時間に"これだけ" 直前期でも間に合う]
午前Ⅰ試験を受験される方はこちらも必要です。
・ALL IN ONE パーフェクトマスター 共通午前Ⅰ 情報処理技術者試験
サイト
YouTubeチャンネルです。情報技術者試験の高度区分について多くの解説動画を掲載しており、ポイントが押さえられていてかなり参考になります。ITストラテジストに関する動画を一通りチェックしました。
勉強法
午前Ⅱ試験
教材①のテキストを通読し、章末の問題集で該当箇所の問題を解くというスタイルです。
テキストを読んでインプットしたら、該当する箇所の問題を解いてアウトプットを必ず行い、インプットとアウトプットを必ずセットで行うようにしました。
中小企業診断士試験や基本情報技術者・応用情報技術者試験で知っている内容がほとんどだったため、1回目、2回目の受験勉強ではどちらも教材①のテキストは2周で済ませ、あとはすき間時間を活用して過去問演習を行いました。
午前Ⅱ試験は言うなれば足切り試験でしかないため、あまり時間をかける必要はありません。
本番の問題も過去問の使い回しがそれなりに出題されるため、試験直前の追い込みでも対応可能だと思います。
過去問で間違えた問題のうち、知らなかった知識・用語については簡単にまとめて一覧化して覚えるようにしました。
過去問で8割程度を安定して得点できるようになればまず問題ありません。
午後Ⅰ試験
午後Ⅰ試験は国語の読解問題に似ています。長文の事例を読んで20~40字程度の記述式で解答していきます。
教材①のテキストを通読して解法を学んだのち、テキストに記載されている過去問を解いていきました。
過去問を解いたら解説を読んで、自分の考え方が合っていたのか、間違っていたとしたらどの部分がずれていたのかを確認しました。
テキストの過去問を一通り解き終わったら、テキストに載っていない過去問をIPAのHPからダウンロードし、可能な限り解きました。
1回目、2回目の受験勉強ではどちらも直近年度から平成28年度までの過去問を解きました。
午後Ⅰ試験のポイントは、問題文に散りばめられたキーワードを使いながら、出題者の意図に沿った解答をすることです。
午後Ⅰ試験は試験終了後に解答例が示されます。解答例があるということは、出題者は解答の方向性が発散しないよう、制約するようなヒントを問題文の中に散りばめているということです。
そのため、自分の言葉で解答する、というよりは、問題文中のキーワードを極力抜き出して解答する、というスタンスで解くと良いです。
ただし、問題文中のキーワードからITストラテジストとしての知識を組み合わせて類推される言葉で解答するような問題もまれにあります。
そして、そのような問題は相対的に難易度が高く正答率は低いことが想定されます。
合格ラインの6割を超えることが目的であれば、やはりキーワードを極力抜き出して解答する、というスタンスで問題ないかと思います。
また、問題文中の一つのキーワードは、一つの設問にしか使用せず、基本的に重複することはありません。
そのため、簡単な設問からキーワードと設問を紐づけていくと、残った部分が難しい設問のキーワードになっていたりします。
個人的におすすめする解法は、
①設問文を軽く一読し、どんなことが問われているのかをざっくり掴む
②問題文を始めから読み、設問文と対応しそうなキーワードに印をつけていく
③設問文をもう一度読み、簡単な設問から問題文のキーワードと設問を対応させていく
④残った難しい設問は問題文を精査し、場合によっては抜き出しではなく解答を類推できるか検討する
⑤問題文のキーワードと設問の紐づけが完了したら、答案用紙へ一気に記入していく
というもので、本番もこのように解きました。
90分の試験時間で1問あたり45分と時間に余裕がなかったりするので、過去問を演習する際には必ず時間を測って解くと良いです。
午後Ⅱ試験
この試験の最大の難関である論述試験です。
これまでに論述式の試験を受験したことがなく、勉強方法についてはかなり手探りで進めていきました。
教材①のテキストを読んでみたものの、自力で書けるイメージが湧かなかったため、教材②のテキストを購入しました。
教材②のテキストはかなり初歩的な部分から論述の書き方について説明が載っているため、かなりおすすめです。
テキストを読んだことで書き方はある程度理解することができましたが、実務経験もなくいきなり論文を書くことはできないため、まずは写経を行いました。
写経とは、テキストの解答例をそのまま解答用紙に写す作業を言います。どのような内容を書かなければならないのか、どれくらいの文章量を書かなければならないのかを体感する目的で、いくつかの解答例を書き写しました。
次に、事例づくりを行いました。
テキストの解答例で使えそうな内容を拝借し、DX関連の書籍を図書館で借りて読み漁り、インターネットで事例や企業情報などを検索しました。
1回目の受験では2つの事例、2回目の受験では5つの事例を用意し、事例シートとしてまとめました。
最後に、用意した事例を使って過去問を解いていきました。
過去問を解いていくと用意した事例では対応できない設問の要求事項が多々出てくるため、その都度事例シートに追記し、事例のディテールを膨らませていきました。
事例づくりでは「調べものをしてまとめる」という感覚で、「テキストを読んで問題を解く」という今までとは違った試験勉強を味わいました。
選択式・記述式の試験対策では問題を解いて採点すれば正誤がすぐわかりますが、論文対策では分かりやすいフィードバックがないため、自分に実力がついているのかがはっきりせず、モチベーションを維持するのに苦労しました。
午後Ⅱ試験のポイントは、①試験までにいかに準備できるか、②出題者の要求事項に正面から答えているか、③当日の時間配分を間違えないか、だと思います。
1回目の受験では①事例が足りず準備不足で、②要求事項に答えようとその場で内容を考えた結果、③時間切れで尻すぼみの論文になってしまったことが敗因でした。
午後Ⅱ試験では120分で800字+800字+600字=2,200字は最低でも記述しなければならず、その場でじっくり考える時間はほとんどないため、事前の準備が合否を分ける試験だと思います。
午後Ⅰ試験を通過した受験者の約半数が午後Ⅱ試験に合格しています。しっかり準備できれば、実務経験がなくとも合格できる試験だと感じました。
午後Ⅱ試験の対策については、改めて別記事でも紹介したいと思います。
以下は1回目受験時、2回目受験時それぞれの過去問演習状況です。
本番(1回目)
1回目は2023年4月16日開催の試験です。
午前Ⅱ試験は想定通りの出題で足切りは回避したという手ごたえでした。
午後Ⅰ試験は問1と問2を選択しました。問2が自治体のスマートシティ構想の問題で予定より解答に時間を要してしまいましたが、何とか時間内に解き切りました。大外しはしてないだろうという手ごたえでした。
午後Ⅱ試験は問1を選択しました。問題を見た際には、用意した事例ではちょっと厳しそうという印象でした。
直近3年間の傾向から攻めのDX事例をメインで用意し、サブで業務効率化事例を用意していましたが、肉付けが甘く汎用性に乏しいものでした。
消去法で問1を選び、骨子を作成し始めたものの、要求事項に対する答えをその場で考えざるを得ず、具体性に欠ける説得力のない内容になってしまいました。
更に、骨子作成に時間がかかり書き始めが遅くなってしまったため、設問ウに割く時間が無くなってしまい、なんとか書き上げたものの最後は内容が非常に薄くなってしまいました。
結果(1回目)
試験から約2か月後の6月30日に合格発表がありました。結果は以下のとおり午後Ⅱ試験でB判定となり不合格でした。
午前Ⅰ試験:免除
午前Ⅱ試験:88/100
午後Ⅰ試験:82/100
午後Ⅱ試験:B
本番(2回目)
2回目は2024年4月21日開催の試験です。
午前Ⅱ試験は前回同様、問題ないという手ごたえでした。
午後Ⅰ試験は問1と問3を選択しました。設問数が少ないと万が一外した時の失点が大きいと考え、あえて設問数の多い問1と問3を選びました。問3が解き易かったため早めに解答を終え、問1に時間をかけて解きました。
午後Ⅱ試験は問2を選択しました。準備してきた事例が使えそうな問題が出題されたため、内心大喜びでした。しかし、自分がそうであれば同じように準備してきた受験者は多いだろうと考え、この問題の肝である(と感じた)「想定した当初の要件とのかい離」についての要求事項はしっかりと記述しなければと思い、準備してきた事例をカスタマイズしながら骨子を作成していきました。
論旨展開を気にしながら慎重に書き進めた結果、昨年同様、設問ウで時間が足りなくなり、殴り書きで論文を書き上げるという不本意な最期となってしまいました。
要求事項には正面から答えることができそれなりに手ごたえを感じた一方で、殴り書きした文字は相当汚く、採点者は読めるのかという不安を覚えつつ試験が終了しました。
結果(2回目)
試験から約2か月後の7月4日に合格発表がありました。
午後Ⅰ試験が前回より下がってしまいましたが、以下のとおり合格することができました。
相当汚い文字をなんとか解読し採点していただけたようで、大変感謝です。
午前Ⅰ試験:免除
午前Ⅱ試験:92/100
午後Ⅰ試験:70/100
午後Ⅱ試験:A